資格受験者、学校受験に独学大全はおすすめできない。

独学大全という本は、ご存知でしょうか。

 

 

これなんですが、読み物としては面白いので知的好奇心を満たすにはもってこいの本です。

また、論文をこれから書くであろう大学生には論文の調べ方、論文を読むための基礎学力の身に着け方が書いてあるので、知のアスリートを目指す方は良書だと思います。

 

しかし、これが資格受験者、例えば、日商簿記検定とか電気主任技術者とか、あと高校受験、大学受験で使えるかといえば、もしこの本を読んでいるならすぐにでも閉じて東大、医学部、司法試験合格者などの難関校、難関資格合格者が書いた勉強指南書を読むべきです。

 

 

この理由は、

 

『戦略の失敗は戦術で補うことはできない。』

 

からです。

つまり、この本のとおり資格試験の勉強した場合、戦略的な失敗点が存在があるということです。少なくとも私はそう考えています。

ここでいう戦略に相当するものは、テキスト選びとその学習に相当し、それが致命的に問題があります。つまりテキスト選びに相当な問題があり、テキスト選びを誤れば貴重な時間を浪費し合格から遠のくと私は考えます。

 

 

クラウゼヴィッツ戦争論」で戦略、戦術の違いが論じられていますが、その違いを端的に表す言葉として、「戦術の失敗は戦略で補うことが可能だが、. 戦略の失敗は戦術で補うことはできない」という格言があります。

戦略とは戦争目的を達成するために(ざっくりいうと勝利のために)、全体的に長期的視野に立ち、戦闘を配列すること(運用すること)にあります。

戦術とは、そのある一つの戦略を達成するために具体的な実行手段です。

 

ここで資格試験や学校の受験(以下、資格試験)に当てはめて考えていきます。資格試験の受験での目的は合格することにあります。資格試験ですとその受験する資格によって基準はまちまちですが、多くはある所定の点数を取ることにあります。

さて、所定の点数を採るために必要なことを戦略と戦術に簡易的に具体例を挙げます。

あくまで、戦略と戦術の例と挙げるのであって、これが合格の極意というわけではないのでその点は注意してください。

 

戦略として、資格試験ならあるテキストをxか月に渡りそれを読み出題範囲を理解する、その後問題集をyか月かけて解く、目的は合格点に達するために解けるようにすること、とします。

戦術として、テキストの理解を達するために読み方は重要な個所をライマーを引きながら読む、合格点に達するための解ける力をつけるため問題集は一度一通り解いた後で不正解の個所を再度解きなおすとします。

 

ここで、見るように長期的な目的達成の手段として戦略があり、その戦略を達成するために戦術が従属的にあります。そして、適切な戦略を選択しなければ、仮に優れた勉強術(戦術)、例えばラインマーカーを引くとか、樹形図(メモリーツリー)を書くとか自分に合い学習効率を高めるものであったとしても、合格から遠ざかるのは言うまでもありません。なぜなら、戦略部分に当たる勉強のテキストの選択が誤っているならば、それにかける時間労力が割かれからです。

 

話は長くなりましたが、独学大全に戻ります。独学大全の「●知識への扉を使う」、「25 入門書・事典・書誌を兼ねた独学者の友「教科書」」という項目があります。

早い話が、勉強するには教科書から勉強しろということです。ここでいう教科書というのは皆さんが想像しているようなものではありません。今まで、小中高と学校で配布されていた「教科書」というのはこの独学大全では、「授業書」と呼称し、「教科書」なるものと区別しています。「入門書+辞典+書誌を束ねたオールインワン」というコンセプトとする本を教科書と呼んでいます(独学大全p285)。

具体的な教科書を挙げると、

 

 

 

 

のように海外の著者で且つ大学で使われるような教科書を例に挙げています(独学大全p331)。それを入門書と呼んでいます。

 

入門書として教科書を使う

大学レベルの教科書はかなりページ数が多く、盛り込まれた情報も入門書や一般向け概説書よりも専門的で正確かつ詳細である。読み通すには入門書や概説書よりも時間がかかり、また骨が折れると言える。

しかし、(中略)まったくの諸学者が一人で読んで理解できるよう、かみ砕いた解説が行われることが多い。つまり下手な一般書よりもずっとわかりやすく書かれた「入門書」として利用できる。

独学大全 338ページ

 

興味深いのは、読者の到達したいレベルに応じて教科書を提示してなく、大学の授業で使う教科書を勧めていることです。

 

個人的な解釈にはなりますが、ある人にとっては簿記検定2級合格レベルの知識なり解き方、理論の習得で十分に達する人もいると思います。この本には簿記に関する教書についての記述がありませんがこの章を字面どおり解釈すれば、簿記を学ぶなら大学で学ぶ会計学の教科書を読むべきとなるでしょう。簿記検定2級合格レベルまで理解したい人に大学の教本を勧めても、たしかに勉強する範囲は満たすでしょう。しかしながら、本来想定していた以上の勉強量となり、受験者が通常使うような参考書で学ぶよりも時間や労力が当然かかります。大学の教本で勉強すれば、アカデミックな理解が深まるかもしれませんが合格するのかはわかりません。少なくとも簿記検定を合格するために必要なテクニックとは書いてないでしょう。

(それでは、テキスト選びで勉強する人に合わせて選べばいいと皆さんは思うかもしれません。これについては、この本の冒頭で多くの独学者を対象としている旨が書かれており、したがってこの教科書の選び方も汎用的に書かれるべきで、そうでなければ注意書きを書くべきであると思います。)

 

さて、この教科書選びとそれで学ぶことは、戦略か戦術かといえば戦略に当たる部分だと思います。なぜならば、その教科書で学ぶことに相当な労力と時間をかけるからです。当然誤った教科書を選べば合格から遠のくのは言うまでもありません。

 

『戦略の失敗は戦術で補うことはできない。』

に戻ります。誤った戦略を選択すれば合格から遠のきます。それは、小手先の手法ではカバーはできないものになります。資格試験、学校の受験生であれば現役で東大、医学部、司法試験合格者が書いた勉強指南書を読むべきです。こちらであればテキスト選びとか問題集の解き方など合格に必要なことが書かれています。

 

批判的に書きましたが、読み物としては面白いので知的好奇心を満たしたり、最新のアカデミックな知に触れるにはどうすればいいかという問いには、この独学大全では詳細に答えなりヒントが書かれています。論文をこれから書くであろう大学生には論文路調べ方、論文を読むための基礎学力の身に着け方が書いてあるので、知のアスリートを目指す方は良書だと思います。

 

この著者はブロガーでブログでまとめたものを独学大全で出版したそうです。最後に、この「25 入門書・事典・書誌を兼ねた独学者の友「教科書」」のもとになったと思われるブログ記事を紹介します。

 

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